Dec 17, 2008

『ガラパゴス化する日本の製造業』 宮崎智彦

アマゾンでおすすめ表示され、存在を知った本。

製造業を取り巻く環境が大きく変わっていることを証明し、(特に日本人に対し)現実を突きつけるために書かれたような本。野村証券で電電系企業分析・戦略分析を生業にする著者が書いている。

結論から言えば、「このままでは日本の総合電機は危ないよ、世界は大きく変わっているよ」ということである。根拠としては、中国、台湾、韓国がそれぞれの手法で日本の製造業にキャッチアップし、むしろ一部においては既に追い抜いていることを挙げている。

まず取り上げられているのは、「日本の市場は特殊なハイエンド市場であることを認識せよ」である。携帯電話やその他家電を始め、日本市場向けのものは機能的に高付加価値過ぎて他の国では価格的に敬遠されている現状を示している。この流れが続く中で、筆者は「日本はすでにガラパゴス諸島(のような特殊かつ限定的な生態系)になっている」と主張している。つまり、世界を相手に戦うパワー、免疫を失いつつあるということである。

主張されていることはまさにおっしゃる通りで、自分も家電を売る身として同じことを考える。「この機能はいったい誰が使うのか??」という疑問を自社製品に投げかけることは多いし、実際に自分が購入したもの(特に携帯電話)にも同じことを思う。

個人的には、日本人の「職人気質」が余分な形で発露した結果だと考えている。製品そのものの「高み」を目指すことに固執し、それを買う人間、使う人間を二の次にしてしまう。このような製品ばかり作る企業を、日本人よりも現実的で、したたかで、世界のマス市場を見据えている人々が支持するはずはない。この本を読むことでその考えを確かなものにした。

また、ビジネスの仕組みについても言及。日本の電機メーカーにありがちな、すべての工程を自社もしくは自社子会社で行う「垂直統合モデル」が限界に近づき、台湾企業とその顧客であるアメリカ系ファブレス企業を中心とした「水平分業型」モデルが猛威を振るっているとしている。

特にこの流れはモジュール型の製品(擦り合わせを必要とせず、パーツの組み合わせで機能する製品、パソコンなど)で大きな成果を上げているようである。また「後だしジャンケン」でコスト的アドバンテージを得やすい半導体や液晶パネルに関しても、日本企業の劣勢ぶりが浮き彫りになっている。

今までの収益モデルに依存していては、日本の総合電機メーカーに明日はない。世界を相手に戦わないとただ弱体化するのみ。それでもなお、日本市場を大事にし過ぎ、横との比較ばかりの日本企業(弊社も含め)が虚しい。

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